William Morris(ウィリアム・モリス)のパターン・柄の種類を解説|人気作品のデザインから本人の思想・背景まで紹介

小動物や植物をモチーフにし、ひと目でイギリスらしいとわかるデザインをつくったのが「William Morris(ウィリアム・モリス)」です。
中世から近代に移り変わる激動の19世紀に活動したWilliam Morrisは、ただおしゃれなデザインをつくっただけでなく、イギリス人が今も大切にする価値観すらつくったと言われています。
本記事では、William Morris(ウィリアム・モリス)の代表作品(柄・パターン)を紹介しながら、William Morrisという人物・思想、そして現代のイギリスに与えた影響についてわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、イギリスのことがもっと好きになり、生活を豊かにするヒントがもらえると思っていますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
William Morris(ウィリアム・モリス)とは?

William Morris(ウィリアム・モリス)は、イギリス生まれの「モダンデザインの父」と言われるデザイナー・芸術家です。
William Morris(ウィリアム・モリス)が活動した19世紀は、産業革命の真っ最中。世の中には大量生産品が溢れ、安価で粗悪な工業品が多くつくられました。
そんな状況への反発から、モリスは中世のデザインを踏襲した「手仕事のようなデザイン」を落とし込み、書籍や壁紙、家具やステンドグラスを作成しました。(アーツアンドクラフツ運動と言われています)
モリスの功績は、20世紀のモダンデザインの基礎をつくったこと。その後のアート世界に大きな影響を与えたと言われています。
参考:モリスとアーツ&クラフツ | ウィリアム・モリスの世界
William Morris(ウィリアム・モリス)の作品の特徴

William Morris(ウィリアム・モリス)の作品の特徴は、自然界をモチーフにしたパターンであること。
鳥や植物、果物や小動物などを美しい絵画のように描き、アースカラーと組みあわせています。
モリスのデザインからは、どことなく「イギリスらしさ」を感じますよね。それはつまり、イギリスらしいデザインに大きな影響を与えているからと言えます。
また、パターンとは、一定のデザインの繰り返し・規則性とも言われます。そのため、たくさんの同じデザインが連なったWilliam Morrisのデザインは、壁紙や家具にぴったりといえます。
参考:ウィリアム・モリスの魅力について | MORRISWORLD(モリスワールド)
William Morris(ウィリアム・モリス)の代表パターン・作品解説
- Strawberry Thief(イチゴドロボウ)
- Willow Boughs(ウィローボウ)
- Snakeshead(スネークヘッド)
- Pimpernel(ピンパーネル)
- Anemone(アネモネ)
- Daisy(デイジー)
- Brer Rabbit(ブレアラビット)
- Cray(クレイ)
Strawberry Thief(イチゴドロボウ)

Strawberry Thief(イチゴドロボウ)は、モリスの代表的な家具パターンのひとつです。イギリス・コッツウォルズにあるケルムスコットという家で見た、いちごを盗む小鳥をモチーフにしています。
“インディゴ反応“と言われる、難易度の高かった印刷法でプリントしされており、非常に高価な柄でした。しかし、Strawberry Thiefは大人気となり、ウィリアム・モリスを代表柄となりました。(参考:V&A)
名称 | Strawberry Thief |
製作年 | 1883年 |
Willow Boughs(ウィローボウ)

Willow Boughs(ウィローボウ)は、1887年に発表された壁紙のパターンです。テムズ川沿岸の柳の木にインスパイアされたとされています。
イギリスでは16世紀以降、模様付きの壁紙を使用したと言われています。貴族階級のみならず、労働者階級の家の壁にも壁紙は使われ、多くの国民の生活必需品でした。
Willow Boughsのデジアンは、連続的のように見えて、1枚1枚に個性があり、ところどころクネッと曲がっています。まるで現実の柳の葉ような紋様は、最高傑作の1つとされています。(参考:V&A)
名称 | Willow Bough |
製作年 | 1887年 |
Snakeshead(スネークヘッド)

Snakeshead(スネークヘッド)とは、蛇の頭…ではなく、フィラティリア(アミガサユリ・オウカンユリ)をモチーフにしたパターンで、家具の布張りに使われました。
Snakesheadは、モリスがインドなどの東洋的デザインにインスパイアされた作品の1つ。更紗のデザインを組んだ紋様は、モリスのお気に入りのデザインだったといいます。(参考:V&A)
名称 | Snakeshead |
製作年 | 1876年 |
Pimpernel(ピンパーネル)

Pimpernel(ピンパーネル)は、ルリハコベという10〜20cmほどの草丈の小さな花。日本でも多く見られ、道端にふつうに生えています。
中心線から左右対称で描かれるシンメトリーデザインであり、等間隔で配置されたルリハコベがなんとも美しいデザインです。
もともとのデザインはモリスのロンドンの自宅(ケルムスコットハウス)のダイニングルームに飾られています。(参考:V&A)
名称 | Pimpernel |
製作年 | 1876年 |
Anemone(アネモネ)

Anemone(アネモネ)は作品年代は不詳ですが、19世紀後半に作成されたとされています。もともとは壁紙のデザインとして発表されました。
Anemone(アネモネ)とは、日本名でイチゲと呼ばれる植物で、花言葉は「あなたを愛します」だそう。
デザインは左右対称ではありませんが、まるで敷き詰められたフラワーボックスのようで、なんとも1つ1つの様相を観察してしまいます。(参考:V&A)
名称 | Anemone |
製作年 | 19世紀後半 |
Daisy(デイジー)

Daisyは、William Morris(ウィリアム・モリス)の活動のなかでも比較的初期に発表された作品です。
ある意味モリスらしくない「余白のあるデザイン」は、まさに作風の変化を感じさせます。
注目したいポイントは、実は花ではなく壁紙部分。よく見ると地面のようなテクスチャーが書かれており、自然をモリスの観点で切り取ったデザインとなっています。(参考:V&A)
名称 | Daisy |
製作年 | 1862年 |
Brer Rabbit(ブレアラビット)

Brer Rabbit(ブレアラビット)は、家具用の布地として発表されたデザインです。お尻を向けあったうさぎが、なんとも可愛らしい装い。モリスの娘の愛読書「Uncle Remus(リーマスおじさん)」の物語に登場するうさぎがモチーフです。
ちなみにこの「リーマスおじさん」の話は、Disneyの「スプラッシュマウンテン」のモデルになった話。このBrer Rabbitは、日本語訳で「うさぎどん」と言われています。
名称 | Brer Rabbit |
製作年 | 1880-1881年 |
Cray(クレイ)
Cray(クレイ)は、モリスの経営するモリス商会のなかでもっとも高価なプリントの1つでした。
その理由は複雑な大小さまざまな花のプリントが、34枚の版木で表現されたから。1つ1つを指で確認してしまいながら眺めてしまうほど美しいデザインは、間違いなく傑作の1つでしょう。
Cray(クレイ)とはテムズ川の支流の1つで、William Morris(ウィリアム・モリス)はその近辺に暮らしていました。趣味の散歩の際に見つけた支流に咲く花々を描いたのかもしれませんね。(参考:V&A)
名称 | Cray(クレイ) |
製作年 | 1884年 |
William Moris(ウィリアム・モリス)の柄一覧を知りたいなら本を買ってみよう
William Morris(ウィリアム・モリス)がデザインしたパターン・柄の種類は、色違いなどを合わせると250以上にのぼります。
William Morris(ウィリアム・モリス)の世界観に触れ、作品を手元に置いておきたい方は、書籍の購入をおすすめします。
日本語に翻訳されているものだと「ウィリアム・モリス – クラシカルで美しいパターンとデザイン」がおすすめです。
全250種類のパターンが単行本で惜しみなく紹介されており、いつ眺めても楽しい本になっています。
William Morris(ウィリアム・モリス)について知っておきたいこと・豆知識
ここからは、William Morris(ウィリアム・モリス)のデザイナー以外の側面である、思想家・社会活動家・詩人としての顔に迫っていきます。
それと同時に、知っておきたい豆知識も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。
William Morris(ウィリアム・モリス)の思想は現代のSDGsに通ずる
William Morris(ウィリアム・モリス)の名言として、下記のものがあります。
役に立たないもの、美しいと思わないものを家に置いてはならない。
Have nothing in your house that you do not know to be useful, or believe to be beautiful.
逆に言えば「役に立つもの・ 美しいもの」を家に置きなさにという意味で、すなわち役に立つものであれば長く家に置いておくということになります。
現代もまた大量消費社会と言われ、モリスが生きた時代と通ずるものがあります。しかし、そんななかで「価格」という価値観に軸足を置くのではなく「役に立つ・美しい」という基準でモノを選べば、良いものを長く使える「エコ」な買い物ができると思います。
William Morris(ウィリアム・モリス)の政治思想は「マルクス主義」だった

William Morris(ウィリアム・モリス)の時代は19世紀の産業革命期。世界が急激に変わるなか、その流れと反発するようにマルクス主義という思想も生まれました。
マルクス主義とは、共産主義のもととなった考え。マルクスが書いた「資本論」をベースとした政治思想です。
William Morris(ウィリアム・モリス)は、アーツアンドクラフト運動の先駆者であると同時に、社会活動家でした。詳しい内容については、たくさん書籍が発売されているのでチェックしてみてください。
William Morris(ウィリアム・モリス)は詩人としても有名
William Morris(ウィリアム・モリス)はデザイナーであると同時に、詩人でもありました。モリスの詩の型は「バラッド詩」と呼ばれるもので、18世紀のイギリスで生まれたものです。
「バラッド詩」とは、もともとの民族伝承などで口伝いに伝わってきた物語を文字に書き起こしたもの。日本でいう琵琶法師のような叙事詩に近い型です。
モリスの代表作は「The Defence of Guenevere and Other Poems」「The Earthly Paradise」で、英国バラッド詩アーカイブというサイトで読むことが可能です。
興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。(参考:英国バラッド詩アーカイブ ( The British Literary Ballads Archive ))
さまざまなブランドからWilliam Morris(ウィリアム・モリス)の柄のものが買える
William Morris(ウィリアム・モリス)のモダンで革新的な柄・パターンは、さまざまなブランドからあしらった製品が発売されています。
イギリスのビニール傘・Fultonからも、William Morrisコラボデザインの傘が発売されていたり、陶磁器メーカー・Royal worcestorとのコラボマグカップも発売されていたります。
多くのイギリスブランドをはじめ、英国王室御用達(ロイヤルワラント)ブランドもコラボをしているので、調べてみるのも楽しいですね。

William Morris(ウィリアム・モリス)を知って生活を豊かに

イギリスのモダンデザインをつくったとされるWilliam Morris(ウィリアム・モリス)。いまや多くの製品でそのデザインを見ることが多いですが、デザインの生まれた背景を知ると、より一層魅力を感じますね。
特に19世紀の大量生産時代と、現代の21世紀の大量消費時代は通ずるところが多く「ていねいな暮らし」が注目される現代は、常に社会へのどことない反発から生まれるムーブメントだと実感します。
そんな「ていねいな暮らし」をデザインレベルで体現するWilliam Morrisの作品を、生活に取り入れてみませんか。
本サイトではイギリス雑貨の通販サイト・Mini bespokeによって運営されています。オンラインストアでは、管理人が厳選した生活を豊かにするイギリス雑貨を揃えているので、ぜひチェックしてみてください。William Morrisの製品も取り扱ってます♪