なぜイギリスで紳士は生まれたのか?英国紳士のマナーや振る舞い・由来について分かりやすく解説

イギリスといえば「英国紳士」を思い浮かべる方も多いでしょう。英国(イギリス)紳士のスタイルやコーディネート、佇まいは多くの男性にとっての憧れの存在でしょう。
また、英国紳士の立ち振舞いを自分自身の生活に取り入れることで「ワンランク上の大人」として、ひと目置かれる存在になれるかもしれません。
本記事では英国紳士のルーツから成り立ち、紳士として意識したいマナーや立ち振舞をまとめています。英国紳士は外見ではなく、中身からとも言われています。英国紳士のスタイルを取り入れたい方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
英国(イギリス)紳士とは?

よく「イギリスは紳士の国」と言われますが、元をたどると「紳士」とは階級を表す言葉。すなわち、男性の性格を表す言葉ではありません。
しかし、日本にも「武士道」という似た言葉があります。かつては「武士階級」にのみ広がっていた概念ですが、やがて一般庶民にも広がります。
「紳士」という概念も同様に、現在では幅広く使われています。
もともとは上流階級・ジェントリに由来する階級のこと
紳士(Gentleman)の由来となった言葉は「Gentry(ジェントリ)」です。
ジェントリとは、土地を持った地主であること。もともとは「騎士(Knight)」が大部分を占め、身分としては平民に属しますが、たくさんお金を持っているため、やがて「Gentry(郷紳)」という身分ができました。(参考:ジェントリ/郷紳)

日本の歴史でいう「貴族」と「豪族」の違いみたいなものですね!
現在では上層中流階級以上の身分のことを指す
かつては「Gentry(ジェントリ・郷紳)」という立場を示す言葉が「Gentleman(ジェントルマン)」でしたが、現在では、その用語は幅広い身分でもなれるとされています。
- 政治家
- 医師
- 法律家
- 聖職者 etc.
また「Gentleman(ジェントルマン)」は単なる身分を表す言葉ではなく「紳士らしい振る舞い」など、所作や姿勢などを表す概念として広く普及しています。
なぜ英国(イギリス)で紳士は生まれたのか?

もともとは「Gentry(ジェントリ)」から生まれたGentleman(ジェントルマン・紳士)ですが、なぜイギリスでその概念が生まれたのでしょうか?
英国での紳士誕生の歴史を紐解いていきましょう。(参考:Sixteenth Century Definitions of the Gentleman in England)

私は日本の武士・大名誕生の類似点がとても興味深かったです!
イギリスの宗教改革によって「土地」を買う中流階級者が増えた

16世紀のマルチン・ルターによるドイツ(当時の神聖ローマ帝国)宗教改革は有名ですが、後半にはイギリスでも宗教改革が起きました。
イギリスでの宗教改革を簡単に説明すると、エリザベス1世の時代にイギリス国内でカトリックとの訣別を行い、イギリス国教会が勃興したこと。その際に、イギリスでは「修道院(カトリックの教会・シェルター)」の土地の没収が決まりました。
そして、修道院から没収されたジェントリに分けられました。この宗教改革が、ジェントリの数を増やし、またイギリス議会政治の中心的存在になっていきました。
産業革命における資産家の勃興が背景にある
16世紀に起こったイギリス宗教改革に加え、18世紀以降の産業革命も多くのジェントリ・ジェントルマンを生み出しました。
それまで農業中心だった国民が、だんだんと工業中心となり、それにともなって経営者や資産家というお金持ちの層を生み出しました。
かつて「貴族」と「平民」には大きな壁があり、お互いは相容れない階級でした。しかし「産業革命」は「土地の購入=ジェントルマンになれる=貴族に近づける」という様式を確立。産業革命もまた、多くのジェントルマンを生み出しました。
現代では「理想像」の象徴としての意味合いが強い
かつては階級として存在していた「Gentleman(ジェントルマン)」ですが、現代では少し意味合いが異なります。
現在では「教養」「道徳」を身に着けた者を形容詞的に「gentleman」といいます。
ただしイギリスは現在でも階級制度が残る国。かつてジェントルマンと呼ばれた人たちは、エリートクラスと名前を変えたと言われています。

紳士的!という言葉があるように、現在はある種理想像といった形で使われることが多いですね
英国(イギリス)紳士が大切にしている振る舞い・マナー(服装編)

英国紳士の歴史を紐解くと「紳士」になれなくとも、「紳士的な人」にはなれそうですね。そして、その「紳士」とはマナーや振る舞いが洗練されていることを指します。
こんな言葉があります。
Manners maketh man
William Horman
– マナーが”男”をつくる
映画「キングスマン」で有名になりましたが、元はウィンチェスター・カレッジなどを創設したWilliam Hormanの言葉。すなわち「紳士=マナー」であるとも捉えられます。
ここからは、現代の紳士的な人が身につけている振る舞い・マナーを紹介します。多くのイギリス男性が特に意識せずに振る舞っていることを紹介するので、ぜひみなさんも日常に取り入れてみてはいかがですか?
自分に似合う服を探し、なぜ選んだか?を持つ
英国紳士は、自分に似合う服を知っており、それを選んだ理由を答えられます。
紳士が服を選ぶ基準は「流行のBarbour(バブアー)だから着る」ではなく「アウトドアにぴったりな服のBarbour(バブアー)が似合うから買う」です。
そして、自分の選んだ服には選んだ理由を答えられるのが英国紳士です。「Barbourの布地のワックスの撥水性が良い」や「裏地のチェックが好み」など。
服を買うときに「なぜ自分はこれが欲しいのか?」を自問自答すると、衝動買いも抑えられるかもしれませんね。
さりげない小物づかいを身につける
英国紳士のファッションは「小物使い」に宿ります。他人からよく見えるアウターやボトムスも大事ですが、さりげなく見える小物にこだわるが英国紳士のファッションです。
以下のアイテムは、英国紳士的なファッションをするならこだわりたいアイテムです。
- カフスリンク
- ネクタイピン
- ネクタイ
- ポケットチーフ
逆に言えば、どんなに上質な服を身にまとっていても、小物がチープであればすべてが無駄になります。英国紳士こそ、小物に力を入れます。(それが経済力を表すのですが…笑)
服装に見合った振る舞いをする
英国紳士は、ファッションに見合った振る舞いをします。
どんなに上質で高級なファッションを身にまとっていても、それを着ている本人のマナーが悪かったら元も子もありません。
スーツを着たら背筋を伸ばす。今日はスーツを着ているから、人に優しく接しよう、など何でも構いません。ただ、上質な服は上質な人が着てこそ紳士といえます。
イギリス紳士が愛用する英国王室御用達のブランドは、以下の記事で解説しています。気になる方はチェックしてみてください。

英国(イギリス)紳士が大切にしている振る舞い・マナー(生活編)
ここからは日常生活における英国紳士の立ち振舞・マナーを紹介します。
英国紳士とはいいましたが、多くのイギリス男性が心がけていること。勉強になるところがありますね。
レディーに敬意を。レディーファーストは当たり前
レディーファーストという概念は、イギリスを始め欧米で広く浸透しています。よく行われるレディーファーストは下記の通りです。
- 車道側に女性を歩かせない
- 扉を男性が開け、女性を先に通す
- レストランの椅子を男性が引き、椅子を戻す
- 会計は男性が行う。(おごりは絶対ではない) etc.
レディーファーストの起源は「騎士道精神」にあると言われています。ジェントルマンは騎士がルーツでしたので、多くの紳士が行うのは納得ですね。
他人を喜ばせる会話術。ときには皮肉やユーモアも混ぜる。
英国紳士の会話術は、自分が何を話したいかではなく、他人がどう喜ぶかに主軸を置いています。そのため、自分語りをする場面は少なく、ゲストが気持ちよく喋れる空間づくりを心がけています。
ただ真面目に聞くだけでは面白くありません。とくには皮肉やユーモアを交えながら、会話を上手く回していくのが紳士の会話術といえます。
どんなときも冷静に。アンダーステイトメントを心がける
英国紳士はアンダーステイトメント(understatement)である、とも言われます。アンダーステイトメントとは、冷静沈着という意味。どんな状況でも慌てずに、冷静に対処するのが英国紳士の振る舞いです。
例えば仕事中にトラブルが起き、誰かに当たったり、誰かのせいにするのではなく、冷静に一つ一つの問題ごとに対処する。これは英国紳士流の対処法と言えるでしょう。
英国(イギリス)紳士が大切にしている振る舞い・マナー(食事編)
続いて、英国紳士の食事のマナーを紹介します。英国紳士に限らず、もはやイギリスでの食事マナーといっていいでしょう。
日本でいうところの「箸をお膳に立てない」「器は左手で持つ」といった話です。それぞれ紹介してきます。
右手にナイフ・左手にフォーク
イギリスでの食事マナーでは「右手にナイフ・左手にフォーク」が絶対です。これは、例えばライスを食べるときも同様。ライスを右手のナイフで、左手のフォークの背に押し付け食べます。
イギリスでは、ナイフとフォークがある際に、右手にフォークを持ち替えて食事をする、ということはマナー違反です。
食事中に音は立てない
日本では「蕎麦やラーメンは音を出してすする」であったり「味噌汁やお茶はすする」といった「音」に対して、多少寛容ですが、イギリスでは異なります。
スープや麺類を食べる際に音を出すのはマナー違反です。食器をカチャカチャと音を立てるのもマナー違反なので「音を出す=マナー違反」と覚えれば簡単です。
チップは10%前後を目安に
イギリスで外食をしたら、サービスをしてくれた店員に会計の10%前後のチップを渡すのがマナーとされています。ただし、すべての店で渡すということではありません。
イギリスでチップを渡す店の基準は「テーブルまで料理を運んでくれるか」を持っておくと良いです。すなわちカウンターで料理を受け取るパブやマクドナルドでは不要といったことになります。
ただし、チップの本質は「店員へのサービスの感謝」です。どんな店でも良いサービスを受けたら、チップを渡すというのが英国紳士の振る舞いでしょう。
英国(イギリス)紳士が大切にしている振る舞い・マナー(ティータイム編)
最後にイギリス文化とは切っては切り離せない紅茶のマナーのお話。日本のお茶にマナーがあるように、イギリスのティータイムにもマナーがあります。
日本でもいただける機会が増えたアフターヌーンティーに参加する前に、必ずチェックしておきたいですね。
ティーカップの紅茶がグルグル混ぜない
実はティーカップの紅茶はグルグルと混ぜるのはマナー違反です。英国紳士たるもの、ティースプーンで上下を往復するように混ぜましょう。

グルグルと大振りで回すより、上品に見えますよ。
紅茶が渋くなったらお湯を注ぐ
放っておくと渋くなっていくティーポットですが、お湯を足せば美味しく戻ります。そして、ゲストのためにもとっさに「お湯をもらえますか?」と店員に聞けるのが粋ですね。
お湯を継ぎ足すのはマナー違反ではないので、遠慮なく頼みましょう。
ティーカップが空いたらホストが注ぐ
お酒の席のマナーみたいですが、ティータイムではゲストのお茶がなくなったら、ホストが注いであげるのがマナーです。
もちろんもういらないかもしれないので「おかわりはいかが?」と聞いてあげるのが一番良いでしょう。会話に興じながらも、ゲストのカップの状況に配慮できれば、もう立派な英国紳士ですね。
英国(イギリス)紳士についての豆知識・トリビア
英国紳士にまつわる知っておきたい豆知識・トリビアについて、紹介します。
知っておくと、いざというときに教養を披露できるかもしれませんよ。
英国(イギリス)紳士は傘をささない?
よく「英国紳士は傘をささない」と言われます。イギリスは雨が降りがちな国ですが、なぜでしょうか?理由は主に3つあると言われています。
- イギリスの雨は結構すぐに止む
- 傘をさしている姿が美しくない
- 多少雨にぬれてもいい格好をしている
英国紳士が傘をささない一番の理由は「イギリスの雨がすぐに止む」ことかもしれません。イギリスは曇りがちでどんよりとした空が多いですが、降る雨もポツポツと降るくらいで大雨というのはほとんどありません。
すぐ止むことを知っている雨のために、いちいち傘はささなのかもしれませんね。

英国(イギリス)紳士のステッキ(杖)は権威の象徴だった
「英国紳士の絵を描いて」と言われると、以下のようなイメージになるのではないでしょうか?

燕尾服(あるいはタキシード)に、シルクハット、革靴、ステッキ…。そう、ステッキです。
よくよく考えたらステッキ(杖)は、足腰の悪いお年寄りが使うもの。なぜ、紳士たるものステッキを使っているのでしょうか?
ファッションアイテムとしての側面が強かったステッキですが、真の意味としては「片手がふさがっていても。何不自由なく生活できるくらい豊か」という象徴だったそうですよ。

なんだか嫌味っぽいですが、イギリスらしいといえばイギリスらしいですね(笑)

英国(イギリス)紳士は、かつて”帽子”が重要だった
現代においてスーツ姿に帽子合わせる場面はあまり多くなく、ビジネスシーンでもあまり見ることはありません。
しかし、英国紳士において帽子はマストアイテム。特にお年寄りの方は、スーツ姿に帽子を合わせることも多いですが、かつては「帽子がなければ紳士になることを諦めている」と言われたほどです。
スーツに合う帽子は、ポーラーハットにカンカン帽、中折れハットなどたくさん帽子があるので、ぜひ自分に似合う帽子を探してみてくださいね。
紳士の国・イギリスを堪能できるアイテムを揃えています
英国紳士の歴史を読みとくと、彼らの長い歴史が行動規範となり「紳士たるもの」というかっこよさを、礼節や振る舞いによって築き上げてきたことがわかります。
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